傷だらけの子供たち【第一話 娘の友人と消えたお札】

阿部由明

2013年03月01日 19:19

※これは2007年に母子家庭の母親が過去にあった実際の出来事を克明に記した記事である。



次女の小学生時代の友だちで、盗癖のある子がいた。


我が家に遊びに来たときは、非常に礼儀正しく、大人びた物言いをする女の子だったが、私にはなにかひっかかるものがあった。


手始めに、次女の小物がちょくちょく紛失するようになった。
次女は、私と同じく「片付けられない女」なので、整理整頓を頑張ろうね、といって流していた。


そのうち家にある現金がなくなるようになった。
最初は私の財布ごと、キャッシュカードもクレジットカードも免許証も全てが一気になくなって、非常に困ったことになった。
免許証やキャッシュカード類などの再発行のためにあちこち駆けずり回ったために休んだ日給、時間、再発行のための手数料数万円と被害額は多大なものだった。


私は、そのあたりで「たぶん・・間違いないな・・」と思い始めていたが、証拠がないのと、まだ確信を持てなかったため、警察に紛失届けを出した。


2度目は、二日酔いでだらしなく眠っている間に、財布の中の現金だけが抜き取られる、という事態が起こった。被害額は3千円。


驚いたことに、このときは私が眠っているすぐ横にバッグを置いていたにもかかわらず、現金だけを綺麗に抜き取られていたのだった。


「あぁ、この子は手馴れてるな。あちこちでやってるな」


と確信した。
2度目の盗難があってから一月も経たぬうちに、3度目がやってきた。
とある家電を買い換えるため、25万円という大金を現金で持っていたことがあった。その日、問題の盗癖のあるリサ(仮名)がいつものように我が家に遊びに来ていた。


我が家は昔ながらの団地のような造りのアパートで、キッチンの真横にくぼんだスペースがあり、そこにPCデスクとPCを置き、椅子もある。
長女は専用PCを持っているが、私と次女は共用で使っている。
私は、帰宅するとPCチェアの背にカバンを掛ける習慣があった。
いつも居間代わりに使っている和室からは、キッチンもPCデスクも全てが見通せるが、私は帰宅して30分ほどうたた寝をしてしまった。


リサ(仮名)が帰ったのは6時。
私はその日早退して5時には自宅にいて、一切外出はしていないし、帰宅してすぐ銀行から下ろしてきた現金を数えていた。


リサが帰ってすぐに夕飯の買い物に出かけ、財布を開けたら、5万円だけがすっぽりなくなっている。残りの20万円が入った銀行の封筒を開けたら、そちらももぬけのカラ・・・・。


「やられたな・・・・」


ため息が出た。
もう黙っているのもこれまでだな、と判断し、次女に言った。


「ね、リサが来てた時あんた席はずした?」


「ううん、あ、一回だけトイレ行った」
と次女は答えた。


「リサの家の電話番号教えて」



続く・・・・・


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